誰にも看取られず一人で亡くなる孤独死。
少子高齢化や未婚者が増加する中、孤独死は今後さらに増加すると考えられます。
孤独死で亡くなった遺体は、どのような流れで葬儀が執り行われるのでしょうか。
故人に遺族が【いる場合】と【いない場合】の葬儀の流れや遺骨の行き先を解説します。
日本では核家族化や未婚化が進み、家族構造の変化とともに一人暮らしをする人が増えました。
厚生労働省がまとめた「2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、全国の世帯総数5194万4千世帯のうち、一人暮らしの「単独世帯」が1529万2千世帯となっています。
このうち65歳以上の単独世帯は742万7千世帯あり、一人暮らしの高齢者が非常に多いのが分かります。
*参考:厚生労働省「2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況 I 世帯数と世帯人員の状況」
一人暮らしでも近くに親族や友人がいる場合は人や社会とのつながりが維持できますが、特に都心部では近所づきあいや地域活動が昔に比べて少なくなっており、隣近所に住んでいる人の顔さえ知らないことも珍しくなくなりました。
近くに家族や知り合いがいない場合、病気で体調を崩したり怪我をして自由に動けなくなったりしても身近に助けを求める人がおらず、その結果、孤独死に至る人も少なくありません。
孤独死が発見されるきっかけは、遺体の腐敗臭に周辺住民が異変を感じて管理会社に連絡をしたり、家族や知人が死後に訪れたりして発覚するケースが多いようです。
孤独死は、誰にも看取られず亡くなった後に発見される死と定義されています。
孤立死という似た言葉を耳にしたことがある人もいらっしゃるでしょう。
孤立死とは、家族や地域社会との交流が乏しく孤立した結果、亡くなってから長期間誰にも気づかれない状態のことです。
亡くなったときは独りだったとしても、普段から家族や友人、地域住民と交流があった人は「孤独死」で、そうした交流が一切ない状態で亡くなった人は「孤立死」と捉えられています。
亡くなったときの故人の状態によって大きな違いがありますが、孤独死・孤立死問題は一刻も早く解決方法を構造化して、社会全体で取り組むべき喫緊の課題といえるでしょう。
孤独死の現場に遭遇したらどう対処すればいいか、咄嗟に判断するのは難しいと思います。
まず、倒れていて動かないけれど目立った外傷がなく、意識を失っているのか、亡くなっているか分からない場合はすぐに救急車を呼びましょう。
救急車が到着すれば救急隊員が生死を確認し、生きていれば病院に搬送し、死亡していれば事件性の可能性も含めて警察へ通報してくれます。
発見した方は、部屋の物を触らないように気をつけましょう。 警察が到着すれば指示に従ってください。
遺体の腐敗が進んで臭いを放っているなど、すでに亡くなっているのがはっきりと分かる場合は警察に連絡しましょう。
警察が遺体の検案を済ませるまでは故人は不審死として扱われ、親族や知り合い、大家さんなど住宅管理の関係者であっても室内への立ち入りは許可されません。
現金や金品、住居の鍵などは警察が現場検証の際に一時的に没収し、後ほど遺族に返還されます。
もし発見者が大家さんや管理会社の関係者であれば家族や保証人に連絡をして、今後のことを話し合っておきましょう。
検視で身元が判明したら、親子や兄弟など血縁関係の近い順に警察が遺族に連絡をして、死亡の事実と遺体の引き取りについて伝えます。
DNA鑑定などを行ってもすぐに身元が判明しない場合は、遺体は専用の保管庫に保管されます(保管料は一泊2,000円程度で、後に遺族に請求されます)。
しかし、孤独死の場合は身寄りがない人も多く、見つかっても親族が引き取りを拒否するケースも少なくありません。
*孤独死の現場に遭遇したら
亡くなっているか分からない場合 | 救急車を呼ぶ |
明らかに亡くなっている場合 | 警察に連絡する |
親族が見つかり遺体を引き取る場合は、警察が状況を説明してくれ、一次没収していた現金や金品、住居の鍵などが返品されます。
遺体の保管先の情報受け取りますが、遺族は遺体の安置場所から遺体を運ぶ手段を検討する必要性が生じます。
もちろん、葬儀や遺品整理も遺族の手で行われます。
状況にもよりますが、孤独死した遺体は引き取ってからすぐに現地で火葬するケースが多くみられます。
理由として、腐敗が進んでしまっている遺体は衛星上すぐに火葬する必要があるからです。
また、遺体の搬送は一般車両で行えないため霊柩車を手配しなければなりませんが、遠距離になると費用がかさみます。
火葬する場所は住民登録に関係なく全国どこでも可能です。
しかし、公営の火葬施設を使用した場合は住民登録している自治体のほうが費用が安く、他の地域に搬入すると割高になることがあります。
このような事情を踏まえ、現地で火葬をしてお骨となって帰郷するのが一般的です。
*遺体を引き取るまでの日数の目安
警察は遺体の死因を調べるために検視を行いますが、死因を特定するまでに時間がかかる場合があります。
死亡原因が判明している場合 | 引き渡しに時間はかからない |
死亡原因がわからない場合 | 検視が必要になるため時間がかかる
*夏場:約1~2週間 *冬場:約2~3日 |
遺体の引き取りは遺族の意思が尊重されるため引き取りを拒否しても問題はありません。
しかし、その場合も警察署に行き、所定の手続きを行う必要があります。
遺族が遺体の引き取りを拒否した場合は、自治体が無縁仏として火葬手続きを行います(次の章で説明します)。
遺体の引き取りを拒否しても、自治体から引き取りに関する連絡が届いたり、手続きが必要になったりする場合があるため、そのときは指示に従って行動しましょう。
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喪主を決めて葬儀を行うのは、一般的な葬儀と同じです。
孤独死の場合は先に火葬を済ませてお骨の状態で帰郷する方が多いので、葬儀を行う場合は葬儀社に相談をしてみると良いでしょう。
故人に兄弟や親戚が多く、亡くなるまで連絡を取り合っていたような場合は葬儀が執り行われる可能性が高い一方で、遠縁の親戚や子供のころから何十年も会っていない従兄弟が孤独死をしたと急に連絡を受けた場合、遺体の引き取りに関して家族で意見が分かれてトラブルが生じることもあります。
喪主を務める親族が葬儀費用を負担します。
遺体を引き取る遺族が居ない場合や身元が分からないときは、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という法律によって地元自治体が火葬します。
遺骨の引き取り手が誰もいない場合は、その後一定の保管期間(自治谷よて異なりますが、5年程度が多いといわれています)を経て、同じように身寄りのない人たちが埋葬されている「無縁塚」に埋葬されます。
遺体の引き取りを拒否した場合、自治体がいったん費用を立て替えて火葬します。
その後故人の遺産から支払い、不足が出れば遺体の引き取り有無とは関係なく遺産相続人や扶養義務者などに後から請求されます。
必要なこと:特殊清掃・遺品整理・相続手続き・諸手続き
遺体の引き取りまでに、孤独死現場の清掃をしてくれる特殊清掃業者を選定しておきましょう。
特殊清掃業者とは、孤独死や事故・事件現場など特殊な状況の清掃や消臭作業を行う業者です。
遺体の発見が遅れた孤独死現場では腐敗の進行具合によっては体液や血液、尿、便が流れ出て床材の深部にまで浸透していることもあり、通常のハウスクリーニング業者では対処できません。
特殊清掃業者に依頼すれば現場の状況に合わせて清掃、消臭作業を行ってもらえ、また人が住める状態に原状回復してくれます。
また、特殊清掃業者の多くが遺品整理や不用品の回収にも対応しているので、一社にすべての処理を任せられるのも利用者には大きなメリットとなります。
死因が特定されるまで現場への立ち入りは許可されませんが、立ち入りは可能になってからすぐ作業してもらえるように、特殊清掃業者を選定しておくことをおすすめします。
民法で定められた相続の権利を有する人は、たとえ死亡の事実を知らなくても、その瞬間から「法定相続品」となります。
遺産相続に関する手続きには、
・遺言書の有無の確認
・相続人の確定
・財産・債務の調査
・相続放棄
・限定承認
・所得税の準確定申告
・財産の確定と評価
・遺産分割協議
・財産の名義変更手続き
・生命保険の死亡金受取の申請
などがあります。
*参考コラム
遺品整理プログレス「親が亡くなったらすることは?手続きや相続などを詳しく解説!」
賃貸住宅の契約や電気・ガス・水道などの公共サービスの解約などの手続きを行わなければなりません。
必要なこと:相続放棄の手続き
遺体の引き取りを拒否した場合も相続放棄の手続きは必要です。
相続を放棄するには、自分が相続人であると知ってから3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書や添付書類の提出をしなければならないため、忘れないように注意しておきましょう。
また、故人が賃貸住宅に住んでいた場合は、大家さんや管理会社から部屋の片付けを依頼されることがあります。
しかし、故人の遺品を勝手に処分してしまうと相続放棄が認められなくなる可能性があるため、自己判断で遺品整理を始めないように気をつけましょう。
相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談すれば、相続放棄が認められる範囲内で遺品の処分や整理方法を提案してくれます。
*参考コラム
遺品整理プログレス「相続放棄すると遺品整理はできない?注意点を紹介します」
孤独死の発見から葬儀までの流れについて説明しました。
孤独死とは、誰にも看取られることなく一人で死亡することを指します。
社会問題として広く認知されおり、決して他人事ではありません。
もし警察から家族や親族が孤独死をしたと連絡が来れば、何をすればいいか分からないと思います。
当コラムで紹介した一連の流れをしっかりと把握し、ご家族やご親族の皆様で孤独死を避けるためにできることを考えるきっかけにしていただければ幸いです。